Q&A 骨粗鬆症特集

 痛みの Q&A

目次
1)骨粗鬆症とはどのようなものですか。
骨が弱くなって、転倒や日常生活動作においてさえも骨折しやすくなる病気のことを骨粗鬆症と言います。A)は正常の腰椎の側面像ですが、 B)は骨粗鬆症の腰椎で骨の萎縮が目立って、 2箇所の圧迫骨折(矢印)を認めます。
2)骨粗鬆症はなぜ怖いのですか。
2003年の国民衛生の動向では、寝たきり原因の1位は脳血管疾患(36.7%)、2位は老衰(13.6)、3位に骨粗鬆症・骨折(11.7%)となっていて、このことは一般にはあまり知られていないことであり、骨粗鬆症は侮れない疾患であるということを物語っています。骨粗鬆症により生じやすい骨折部位は脊椎、大腿骨(足の付け根)、上腕骨近位(肩)、橈骨遠位(手首)です。特に脊椎や大腿骨の骨折は寝たきりなど、さらには生命予後にも影響を生じる可能性があります。
3)どのようなことに気づいたら骨粗鬆症の可能性があるのでしょうか。
a) 若い頃(25歳)と比べて、身長が4 cm以上縮んでいる。 b) 背中が曲がっている(円背)。 c) 骨粗鬆症自己評価指数(FOSTA)([体重(kg)-年齢(歳)]×0.2)が-4未満である。以上に当てはまることがあれば、積極的に骨密度測定を行った方がよいと思われます。
4)骨粗鬆症は高齢者(たとえば70歳以上)になってから心配すればよいのですか。
女性の場合は閉経を迎える50歳代から急増し、60歳代では約3割、70歳代では4割以上となります。これは女性ホルモンの分泌が減少することによって、骨量が低下するからです。そのため、50歳代から女性は骨粗鬆症に関心をもたれた方がよいかと思われます。 また、骨粗鬆症は女性のみの問題ではなく、男性においても認められますが、頻度は女性の約3分の1程度と言われています。そのほかに続発性骨粗鬆症と言って、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、糖尿病、卵巣摘出などの内分泌の病気、関節リウマチなどの炎症性疾患、胃切除、慢性肝疾患、慢性腎疾患などの栄養障害や代謝疾患、臥床安静、ステロイドを服用しているなどの薬剤性の場合など骨粗鬆症をもたらす可能性がある多くの疾患が存在します。 次のグラフからもわかるように男女とも70歳になってからではなく、特に女性は閉経を迎えると骨粗鬆症の注意が必要になります。早期発見には骨密度測定が有用であり、簡単に測定ができます。(山本逸雄:Osteoporosis Japan 7: 1999から作図)
5)骨粗鬆症の診断はどのようにするのですか。
当クリニックでの骨密度測定装置

当クリニックでの骨密度測定装置

医師との問診(骨量の低下する疾患の既往の有無、生活様式、家族歴、女性では閉経後か否かなど)、身体診察(身長の短縮、身長・体重の比率、背中の曲がり具合、腰背部の痛みなど)、骨密度測定、脊椎(胸椎、腰椎)のレントゲン撮影、血液・尿検査(骨の代謝の状態を表すマーカーの数値の測定)などを考慮して総合的に判断を行います。 代表的な検査として、骨密度の測定値が若年成人(20~44歳)の平均値との比較で80%以上を正常、70~80%を骨量減少、70%未満を骨粗鬆症として診断します。しかし、最近では骨量減少群であっても飲酒歴、喫煙歴、家族歴などからリスクのある人には積極的治療を行うよう勧められています。さらに一定量のステロイドを長期に服用している人は骨密度にとらわれずに、骨粗鬆症の予防が必要です。
6)骨粗鬆症はカルシウムを取るなどの食事に気をつければ大丈夫ですか。

もちろん、食事療法や適度な運動療法は基本と言えます。しかし、更年期以降の女性で急速に骨量が低下する場合や骨量低下を伴いやすい疾患を合併する場合(ステロイド使用例、甲状腺疾患など)、骨粗鬆症の家族歴のある場合、一定の基準以下の骨密度しか有さない人の場合は、積極的な薬物治療が必要となります。
7)1日のカルシウムはどのくらい取ればよいのでしょうか。

日本人の1日に必要なカルシウムは600 mgと言われますが、骨粗鬆症と診断された方は800 mgは摂取したいところです。いろんな食べ物から摂取したほうがよいですが、多く含まれる食品は乳製品、大豆製品、小魚・海草類です。
8)運動はどのようなものがよいのでしょうか。

適度な運動は高齢者の骨折予防効果があると言われています。 運動と言っても身近な散歩でも大きな効果があります。始めは週に1~2回くらい、10~15分から開始して、週に5~6回くらい30分は歩行したいものです。また、散歩の他には水泳や水中での歩行などもよいでしょう。 また、日光にあたり、血液中のビタミンD(働きについては後述)を増やすことも大切です。
9)どのような薬があるのですか。
a)カルシウム製剤 日本人は食事によるカルシウム摂取が不足しがちで、食事で不足した分を補うときに処方します。 b) 活性型ビタミンD3製剤 食事からのカルシウムを小腸から吸収するのを助けます。骨密度の増加効果は少ないのですが、骨質を改善する効果があり、骨折を減少させます。また、最近では筋肉にも作用して、筋力を増強させ、体のバランス感覚も改善して、転倒を減らす働きがあることがわかっています。 c) ビタミンK 2製剤 高齢者のビタミンK不足と骨折には関連性が考えられています。骨密度の増加は少ないが、骨密度の増加を介さない骨折予防効果が期待されます。ワーファリンを服用している人には処方はできません。d) カルシトニン製剤 骨密度増加効果はわずかにありますが、骨粗鬆症に伴う疼痛を改善することが主な目的です。週に1回筋肉注射を行います。e) SERM製剤 骨に対して、女性ホルモン用の効果を発揮して骨密度を増加させ、脊椎の骨折(圧迫骨折)を予防します。閉経後女性にしか処方は出来ません。 f) ビスフォスフォネート製剤 骨が吸収されるのを強力に抑える薬です。背骨の骨折やその他(大腿骨など)の骨折の予防にも期待が持てます。最近は1週間や1ヶ月1度だけの服用で可能となり、便利がよくなりました。起床時すぐに服用して30分間は朝食を控えるようにします。30分間は横になるなど寝ることはできません。逆流性食道炎を伴った人には処方はできません。 g) 副甲状腺ホルモン製剤 最近日本で使用可能となった製剤です。今までの薬と違うところは骨を作る細胞である骨芽細胞の働きを活発にして、骨密度を増加させ、骨折の発生を抑えます。今までの薬より、骨密度の増加率も高く、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の方に適応があります。投与期間は18ヶ月や24ヶ月といったように、制限があります。 h) 女性ホルモン製剤 閉経後の女性にエストロゲンという女性ホルモンを投与することにより、骨吸収を抑制して骨密度を増加させます。しかし、性器出血や乳房痛などの副作用の可能性もあります。 i) デノスマブ 破骨細胞という骨を壊す働きをする細胞の形成などに関与する蛋白質を標的とする薬で半年に1回皮下注射を行うことで効果を発揮します。

ビスフォスフォネート製剤の効果

次のグラフから1000人以上の人達で比較したデーターでは、骨粗鬆症の薬を3年間内服することにより、大腿骨頸部骨折(足の付け根)や橈骨遠位端骨折(手首)の頻度は約半分になることがわかります。(Black DM et al: Lancet 348: 1535-1541, 1996)
10)転倒予防について教えて下さい。

普段から運動を心がけ、体の筋力やバランス能力を維持することはもちろんですが、家の中ではじゅうたんのめくり上がりや電気コード、段差などなるべく減らすように心がけ、階段や風呂に手すりをつけるなどの改装も留意したほうがよい場合があります。屋外では動きやすい服装やスリッパなどはさけて歩きやすい靴をはくことが大切です。また、衝撃緩衝剤を入れた下着をつけて、転倒時の大腿骨への衝撃を和らげるヒッププロテクターなどがあります。