医療福祉、誰に相談したら良いのだろう

例えば無料低額診療事業というものがあります。生活に困窮されている方が、指定の医療機関で受診すると医療費が無料または安くなるというもの。ほと んど知られていない福祉制度です。相談窓口は社会福祉協議会や福祉事務所ですが、街のクリニックなどでは知らないところが多いと思います。このように医療 福祉の制度は十分に活用されているとは言い難いでしょう。

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 健康問題は主治医(かかりつけ)に先生に相談するべしと言われますし、介護保険のことも主治医がつなぐと期待されてはいますが、実際には医療と介護の橋 渡しは上手くいっていません。友人知人を辿って、というケースも多々あります。私たちは、自身または身内が病気になったり動けなくなって初めて医療福祉の ことを考えます。イザという時の相談相手は?主治医ですか?お役所でしょうか?。

介護のことはケアマネージャーに、と言われてもどこに信頼できるケアマネージャーさんがいらっしゃるのか、それが分かりません。各地域には地域包括支援センターというものがあって、そこに相談するのが良いのではないかと思いますが、さて窓口はどこでしょうか。

シンプルに考えましょう。地元に信頼できる民生委員さんがいれば、その方でしょう。最近は社会福祉協議会も頑張っています。役所も熱意ある福祉担当者が 結構多いと感じます。民生委員や社会福祉協議会、役所担当者などを通じて、地域包括支援センターなどの専門家を紹介してもらう、といったところでしょう か。病院などは主治医の先生に相談です。主治医がなければ医師会なども良いと思います。

最近はボランティアなどによる相談会、コミュニティカフェなども増えてきました。そういった機会も物おじせずに使っていきたいと思います。探せば直ぐそこにあります。

2015年2月20日

「かかりつけ医」が変わっていきます

かかりつけ医を持ちましょうと書いたことがありました。超の付く高齢化が進む中、かかりつけ医の役割は、いよいよ高まり国も新しい制度をスタートさせました。「主治医機能評価」という名前で全人的医療を行なうかかりつけ医を評価しようというものです。日常的に主治医として、治療から薬の管理、介護保険に至るまで一貫して患者さんを診る先生に新たな報酬が付いたのです。

糖尿病や高血圧の慢性病を中心に「胃腸が専門だから肺の病気は全く診ることはできません」ではなく、全人的な初期対応(プライマリ・ケアと言います)のスキルを身に付けた医師を「総合診療専門医」として認定しようということが決まりました。2017年(平成29年)に研修制度が始まる予定です。目が離せなくなってきました。GUM13_CL09001

軽い病気で大きな病院にかかることが、いっそう難しくなっていきます。大病院は重体の方が専門の治療を受ける場所だからです。だから近所にかかりつけ医を持ちましょう、というだけではありません。かかりつけ医は基本的には一人ですが、グループ化されていく傾向があります。高齢患者が増えて24時間対応が必要になってくるとグループ診療でなければ成り立たないからです。かかりつけ医=開業医の先生という単純化された図式は変わってくるかもしれません。

「地域包括ケア」という言葉をお聞きになった方もあるでしょう。大ざっぱに言えば、ケアサービスの整った地域コミュニティを作ろうという構想です。その中で、主治医=かかりつけ医が中心の一つになってきます。制度が整えられていけば、どうすれば自分のかかりつけ医が見つかるか、も分かりやすくなっていくでしょう。

新しい専門医制度、グループ化の流れなどを見ていきましょう。主治医=かかりつけ医は大きな進化を遂げていくと予想されます。

2014年9月4日

「地域包括ケア」を知ってますか?

日本は高齢社会からさらに進んで超高齢社会と言われるようになりました。団塊世代が75歳以上になっていく2025年には65歳以上人口が全人口の3割、75歳以上人口が2割を占めるようになります。高齢者の生活を支える仕組みが重要になってきた所以です。

 今、地域包括ケアという構想があり、その具体化が各地で始まっています。病気になっても介護のお世話になるようになっても、住み慣れた地域で最後まで生活できるようなケアの仕組み(地域包括ケアシステム)を作っていこうというものです。遠く離れた施設ではなく、自宅や地元の高齢者住宅で今までどおりの生活を続けながらケアを受けることのできる、そういった地域社会を目指すものです。

かかりつけ医、何かの時の入院先病院、介護プランを作ってくれるケアマネージャーなど介護関係者らが地域で連携しての、つなぎ目の無いシームレスなケアの体制を目指します。各地で医療者や介護関係者、行政から民生委員や地域の自治会まで様々な地域の関係者も参加して、試行錯誤を始めています。団地の再生を絡めたところもあり、医療介護の関係だけでなく地域の参加が注目されます。

ここで重要となるのは主治医=かかりつけの先生を持つこと、地域包括支援センターという介護その他の総合相談窓口の存在を知っておくこと、元気な間は地域社会の中で積極的に「地域包括ケアシステム」作りというものに係わっていくことなどでしょうか。まだ目に見える存在とはなっていません。だからこそ、注目していきたいと思うのです。それがあなたの住んでいる地域で包括的なケアの仕組みができるかどうかを左右していきます。

地域で住み続ける、ケアを受け続けることは医療だけでも介護だけでも行政だけでも出来ることではありません。地域社会も含めて医療と介護、行政などが連携して初めて可能となります。まずは関心を持ってみましょう。

2014年6月2日

なぜ煙草をやめるべきなのか?

煙草は嫌われものとなりました。昔はどこでも煙草を喫して煙を漂わせるのが普通の風景でした。今や店内全面禁煙の飲食店も珍しくない世の中です。愛煙家からは「差別的だ」という声すら上がっています。受動喫煙と言われていても、一部愛煙家は主張します。

nosmoke 「ヘビースモーカーでも長生きをした人はいる」、「煙草を吸わないのに肺がんになった人を知っている」というのが愛煙家の理屈です。病気になるのは確率の問題であり、同じような生活習慣下でも病気になる人、ならない人がいます。統計で話をしなければ論にはなりません。喫煙習慣は健康に悪影響を与えることが多くの研究により明らかになっています。吸わないのが、喫煙者に近付かないのが健康にとって正しい態度です。

肺がんなど呼吸器系の病気だけを言っている人が多くいます。喫煙の悪影響は循環器系の病気に関係してきます。検査データ的にはどこも悪くないのに目まいがすると言いつつ煙草をやめない、というのは正しい態度でしょうか。吸いたい、精神衛生上の効果がある、といった理屈は通りません。やめられない、という習慣性がもっとも怖いところです。

生活習慣は健康に大きな影響があります。たくさん食べても、たくさん動けばエネルギーは消費されてメタボ体型にはなりにくい、という単純な摂理があります。しんどいことですが喫煙という習慣を捨てることが必要です。喫煙の害は禁煙後も20年ほど続くとか。習慣に慣らされてはいけません。

自分を、家族を、仲間を守るためにも禁煙すべきかと思います。周りも人間関係を恐れずに「私の前では吸わないでくれ」という勇気が必要でしょう。煙草だけではなく、糖尿病も似たところがあります。習慣を改めない内にあちこちが蝕まれ、やがて苦しくしんどい闘病生活に至ります。生活習慣こそ早期の手当てが必要なのです。

2014年4月22日

もしかしたら、私はがん? -「浮気」ではなく紹介を受けよう

人間ドックで「がんの疑いあり、精密検査を受けて下さい」と言われたらどうしますか?「私はがんなのだろうか」と不安になりますね。精密検査の結果が思わしくなかったら深刻です。多くの方々がより良き治療法は無いかと幾つもの病院に行き、いろいろな情報を集めようとします。気持ちは分かります。当然のことでしょう。

GUM11_CL06008s がんに限りませんが、重い病気になった時、人々は「この医者の言うことに従って良いのだろうか」と思い、他の病院に「浮気」します。名医を求めて、評判に頼ってさまよう方もいます。ここで少し考えたいのです。

治療法は手術による外科的治療、化学療法での内科的治療、放射線治療などがあり、どういう治療法、あるいはその組合せが良いのか、患者には分かりにくいものです。ちゃんと情報を集め、適切な治療を受けるには、「浮気」より、専門のセカンドオピニオン外来に行くのが適切でしょう。最初の病院から検査データ、治療方針意見をもらって、がん治療に長けた拠点病院(がん拠点病院など)を紹介してもらって行くのです。

大学病院だから治療水準が自動的に高いとは限りません。一般的には高い水準にありますが、細かく見れば、得意分野を持つ専門病院の方が良い場合もあります。私の知人も大学病院からの紹介で、そういった専門病院に転院、満足のいく治療を受けて元気に在宅復帰を果たしています。

ネット時代で治療に関する情報はかなり集められるようになりました。大いに参考としたいものです。ただ最初にかかった先生に悪いから、とネット情報だけを手掛かりに他の病院を当ってみるのはいかがかと思います。医師の意見を聴いた上で、然るべき専門病院を紹介してもらうべきかと思います。自分の体のこと、遠慮は要りません。

2013年12月22日

専門医って?知っておきたい医師の専門分野

新しいクリニックが開業しました。看板には「内科」とあります。胃腸が悪い貴方は、この近所に開業したクリニックの先生を「かかりつけ」の先生にしますか?

GUM13_CL09003医師免許は一本です。麻酔科は別として医師は看板を自由に掲げることができます。優秀な先生方のこと、それでも良いのですが、やはり「この先生の専門は何だろう」と気になります。皮膚科の先生に眼を診てもらうのは、やはり抵抗があります。何を勉強して診療されてきたかは、気になって当たり前。情報は集めておくべきでしょう。

内科クリニックと看板にあっても、院長先生にはそれまで歩んできたキャリアというものがあります。そして多くの医師は専門の学会に所属し、それぞれの学会で定められた選考過程を通って認定医や専門医の資格を取っています。専門医資格については、学会によって難度に差があって見直しが国によって進められていますが、医師の専門に関する一応の目安になっていることは間違いありません。

院長先生が何に得意かを知る手掛かりになることは間違いないでしょう。

内科クリニックは数多くあります。他の診療科と違って、外科出身の内科クリニック院長先生もごく普通の存在です。HPなどで簡単に確認できる場合も多いかと思いますが、出身の大学医局や勤務していた病院の診療科などと併せて認定医、専門医資格などを知ることは可能です。胃腸の専門家だった先生に心臓の弱い方が「かかりつけ医になって下さい」とお願いして、戸惑う院長先生もあるかもしれません。頭を下げられれば断りにくくなることも。患者の側で情報収集をしておくべきかとも思います。

自分の身体状況に合ったお医者さんをかかりつけ医に選びたいものです。その他にも手掛かりはありますが、認定医や専門医の資格は一つの判別基準になることでしょう。

2013年6月22日

病院を退院したら

手術が終わって体の状態が落ち着いてきたら退院ということになります。病気前より体力が落ちて生活していけるだろうかと不安になります。そんな時には誰に相談して、お世話になることを考えるべきでしょうか。

GUM11_CL05040 病院にはMSW(メディカルソーシャルワーカー)という相談員が居ます。退院調整看護師という存在もあります。生活のことはMSWに、退院後の医療のことは担当看護師に相談するのが良いでしょう。かかりつけの開業医を居られる場合は、その先生にご相談されるのが良いかもしれません。かかりつけ医は自分の体のこと、生活のことをよくご存知の場合も多いからです。

介護が必要となる場合など、ケアマネージャーがケアプランを立ててくれます。MSWらが紹介してくれるでしょう。地域包括支援センターという存在があります。地域でのセンター所在地を調べて相談に行ってみてはいかがでしょうか。

役所や地域の民生委員がいろいろな相談事に乗ってくれる地域もあります。役所というと役所仕事などと敬遠されるかもしれませんが、福祉担当の方は熱心な場合が結構あります。民生委員も人によりますが、頼りのなる存在であると聞きます。

もちろん、今の時代ですから、ネットで調べる手もあります。退院後の診療を受ける病医院についてネットでいろいろと検索してみると自分に合ったところが見つかるかもしれません。あるいは口コミの評判を確認できたりします。

家に帰ったら、場合によっては施設に入るかもしれませんが、「自分らしく」生きていくために何があるのか、をキチンと知っておきたいと思います。遠慮は要りません。患者さんとご家族にとって、これからも自分たちの生活が続きます。いわゆるQOL(生活の質)は大切にしたいものです。そのために自分たちだけで悩む必要はありません。

2012年12月22日

診療科を正しく理解してますか?

病院に行けば様々な診療科の名前が掲げられています。内科と外科の違いくらいは分かると思いますが、内科だけでも消化器内科、呼吸器内科、循環器内科から内分泌内科、血液内科などに至るまで多種多様です。どの診療科にかかるべきなのか分からなくなります。

GUM13_CL09004_s そもそも、例えば整形外科と形成外科の違いを理解している人がどれだけ居るでしょうか。因みに整形外科は骨など身体内部からの痛みを扱い、形成外科は体表、つまり皮膚科の外科版と思って良いでしょう。心療内科は心の病気を扱い、神経内科は脳神経外科の内科版で神経の病気を扱います。

昔は大雑把に言えば、内科と外科でした。大体の病気は開業医の先生のところで診てもらえば良かったのですが、今の時代はどうすれば良いのでしょうか。一つはHPなどで先生の経歴をチェックすることです。専門医資格も判断材料の一つになり得るでしょう。

大きな病院は専門分化がかなり進んでいます。かかりつけの開業医の先生に相談することで適切な診療科にたどり着くこともあります。総合診療科という診療科にかかることもお薦めです。

総合診療科では日常的な病気の診療の他に、原因がはっきりしない病気、複数の原因が絡んだ病気などを扱います。的外れな素人判断ではなく、医学的根拠に基づいてどの診療科で診療を受けるべきか、を決めてくれます。

ネットなどでの情報収集も良いでしょう。ただしネット情報は玉石混交と思って下さい。正しい理解を助けるための道具くらいに思って活用することが大切です。

お年寄りにはいつも通院している整形外科で何でも診てもらうという方も多く居ます。それが良い悪いではなく、日頃からかかりつけの先生を作っておいて相談できる関係を持つのは必要です。専門分化が進む医学。貴方のことをよく知るガイドが必要です。

2012年9月22日

身近な健康相談相手になるかも

昔は保健所が身近な存在でした。いつの間にか保健所も遠い存在になったように思います。そして保健師の存在も縁が無くなったと感じます。そもそも保健師というのは、どんな仕事なのでしょうか。

GUM11_CL06028 保健所に所属して地域の保健衛生の向上に努めてきたのが行政の保健師です。衛生状態は格段に良くなりました。そのせいか保健師の活躍の場が狭くなったのでしょうか。介護保険が始まってケアマネージャーなどの各種専門家が活躍するようになりました。保健師の仕事とは違うのですが、身近な相談相手としての存在は保健師から他に移ったように感じます。

それでも保健師の仕事は重要です。企業で働く人々にとって、ストレスの多い仕事、職場が増えています。きつい仕事で体調を崩す人も多くなっているようです。従業員の健康維持は企業にとって大きな課題となっています。産業医の先生は数少なく相談相手には敷居が高い存在です。そういう時の相談相手として保健師がいるのです。

医師がやや理屈っぽく説明するのに対して保健師は分かりやすく話してくれます。例えば食事については「栄養バランスに神経質になり過ぎるより独りで食べないこと。誰かと一緒に食べれば、それだけでゆっくり食べるようになるし体には良いですよ」と言われると納得して実行しやすくなります。

一般の方にとっては保健師と看護師は別の存在です。保健師が看護師として働けることなど知らない人の方が多いのではないでしょうか。生活指導、地域や企業の保険衛生のプロフェッショナルとしての保健師をもっと活用したいと思います。例えば企業においてです。企業で働く皆さんに、企業経営者の方々に、保健師の存在意味を理解してもらい、活用して頂くのが早いと思います。地域の保健師にも頑張って欲しいと思っています。

2012年5月22日

人は様々、病気も百人百様と知るべし

一人として同じ人は居ないと言われます。名前も違えば外見も違うし、考え方も趣味も人それぞれです。いろいろな人が居るから世の中に文化が生まれ、科学が発達し技術が花開きます。ダイバーシティという言葉がよく使われるようになりました。多様性という意味です。同じ色ばかりでは街も企業も学校も、病院でもより良いものになりません。

120402 イレッサという肺がんの薬があります。副作用で亡くなる方が出て問題となりました。特効薬として劇的に効き闘病生活から復活された方も居ます。要するにイレッサには治療効果の高かった方と却って亡くなるに至った方の双方のケースがあったというわけです。

このことは同じ病気であっても患者さんによって治療法が違うということを意味します。「これでがんが消えました」といっても、それが真実であっても、他の患者さんのがんも消えるとは限らないのです。病気も百人百様と知りたいものです。

お医者さんが検査データを見て首を傾げて「どこにも異常がありません」と言われることはよくあります。精神的なものから来ている体の不調は原因がよく分からないケースもあります。西洋医学は症状には原因があるとして治療法を考えます。漢方はこの痛みにはこの薬が効くというように、症状に対応して治療がなされます。医学も様々です。

このように病気とその治療は私たちが思うほどシンプルな関係にはありません。病気も様々なのですから。では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。一つはかかりつけのお医者さんを持つということでしょうか。健康履歴から家族のことまで知ってもらっておく。自身でマイカルテ、健康手帳を作っておくのも一つの手です。

知人はイレッサが効きました。喫煙歴が無くホルモンバランスが良かったとか。背景が分かれば治療法もより的確なものとなります。

2012年4月22日